ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第39回

聖無職うどんのやうに時を啜る

(せいむしょくうどんのようにときをすする)

中村安伸

(なかむらやすのぶ)

僕にもけっこう長いモラトリアムがあって、
フリーターをしていた時期もあったし、無職の期間もあった。
お金にならない俳句やら文章やらを書いているのだから
当然の報(むく)いである。
そんなときは絶えず鬱屈(うっくつ)を抱えながらも、
やはり人並みに食べて寝て排泄(はいせつ)しないと生きてはいけない。
働いていないのに、
働いている人と同じ生理現象が生じて対処しないといけないのは、
なんとも切ないものである。

無職でいて、うどんをすする行為も哀しいものだ。
しかもこの句では「聖無職」などとうそぶいており、
よけいに哀切なのである。
この無職の者の意地の張りようが、
うどんをずるずるすする行為を傲慢(ごうまん)にも寂寥(せきりょう)にも見せる。

「時を啜る」という表現には、「光陰矢のごとし」という成句が
暗に含まれているようで風刺的でもある。
季語のないこの句には、
父と母に申し訳ないという気持ちを押し隠しつつ、
大切な「時」を無為(むい)にすする時間がぴりぴりと流れているようだ。