ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第86回

婿となる青年と酌む年の酒

(むことなるせいねんとくむとしのさけ)

広渡敬雄

(ひろわたりたかお)

この句の季語は「年の酒」で新年。
「年酒(ねんしゅ)」「年始酒(ねんしざけ)」ともいうが、
新年に年始回りの客にすすめる酒のことである。

ということはこの句、「婿となる青年」が新年の挨拶(あいさつ)に、
婚約者の家族のもとを訪問した光景である。
「婿となる青年」と詠(よ)んでいるので、
すでに娘の両親側も婚約していることは承知しているのだろう。

もうすぐ娘と結婚する婿をもてなすために、義父はお節料理をすすめ、
青年と差しつ差されつしながら酒を酌み交わしているのである。
まだそんなに結婚する娘の家族とは交流が深くないだろうから、
青年にも少し緊張感がある。
この句にはどんな会話を交わしたかは一切書かれていないので、
そのへんは読み手の想像力に任されている。

義父と青年のあいだに漂うそこはかとない緊張感と気遣いの空気が、
読み手の襟(えり)をも正させるようである。