ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第7回

刑務所の門にバス待つ日傘かな

(けいむしょのもんにばすまつひがさかな)

酒井三代治

このバスを待っているのはどんな人なのだろう。
それを想像するだけでも、
幾通りもの物語が生まれてきそうだ。

たとえば受刑者と面会を終えて、
日盛りのなか、バスを待っている女だとする。
刑務所内ではこもって聴こえていた蟬(せみ)の声が
戸外に出ると、急に喧(やかま)しく耳を圧迫してくる。
夏の日差しが鋭く差してくる。
刑務所の門の外は真夏だと思い至る。

太陽を見上げ、
先ほど面会したばかりの人のことを思い、日傘をさす。
日傘をさすと、女を覆うだけの日陰ができる。
日陰のなかでその人のことを思う。

その人は夫なのか、兄妹なのか、父なのか、母なのか。
誰がどんな罪を犯して入所したのか、
この句からはわからない。
わからないけれど、
バスを静かに待ちながらその人のことを思っている雰囲気が
伝わってくる。
女は何か物思いに浸(ひた)っているのかもしれない。

バスがやって来る。
女は刑務所を振り返り、日傘をそっと掲げて振ってみる。