ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第47回

虚子の忌の犬小屋にまた猫がおり

(きょしのきのいぬごやにまたねこがおり)

鳴戸奈菜

(なるとなな)

俳人の高浜虚子(たかはまきょし)が亡くなった4月8日を
「虚子忌」として春の季語になっている。
俳壇の重鎮であった虚子の忌日(きじつ)に、
犬小屋に猫が居座っているのが、なんだかとぼけた感じでおもしろい。
しかも「また」だから、この猫はしょっちゅう犬小屋に来ては、
あくびでもしてひとときを過ごすのだろう。

しかし、ちょっと謎なのが、
この犬小屋には飼われている犬が実際いるのだろうかということだ。
気の弱い犬で、猫が来ると小屋を明け渡してしまうのかもしれないけれど、
ひょっとしてもう飼い犬は死んでいて小屋だけが残されており、
そこに猫が立ち寄っているとも考えられるのである。

もし犬が死んでいるとしたら、
急にこの句の風景が淋(さび)しげに見えてくる。
この猫は生前の犬と親しくて仲良くしていたとしたら、
小屋をひんぱんに訪ねてくる猫の姿がたまらなく愛しく、
切ない光景となって胸を打つのである。