ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第79回

東京に刺身のやうな西瓜かな

(とうきょうにさしみのようなすいかかな)

野口る理

(のぐちるり)

今思い返すと、僕の故郷の和歌山には西瓜があふれていたように思える。
それは親戚が畑で栽培していたり
近所の人の誰かしらが育てていたりしたからだろう。
夏場にはそのお裾分(すそわ)けが、
冷蔵庫や台所の片隅(かたすみ)に転がっていたような記憶があるのだ。

西瓜といえば、ほとんどの人が夏を連想すると思うが、
季語では秋の分類になるからややこしい。
立秋は8月7日頃だけれど、
その頃から西瓜の最盛期を迎えたり甘みが増したりする
というのが理由のようである。
現代では7月に西瓜の最盛期を迎える土地も多いと思われるので、
やはり季感(きかん)が曖昧(あいまい)な季語かもしれない。

さて、この句だが「東京」の地名がよく効いている。
たとえば、お店の定食のデザートなどに付いてくる西瓜が
「刺身のやうな」サイズと薄さであろう。
西瓜の味はするけれど、なんだか食べた気がしない。
西瓜が上品なお口直し的存在になって消費されがちなのが東京なのだ。
西瓜はやはりかぶりつきたいものである。