ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第28回

嫁がねば長き青春青蜜柑

(とつがねばながきせいしゅんあおみかん)

大橋敦子

(おおはしあつこ)

「なあ、紀美子、いま好きな人おるのん?
 付き合うてる人がおらんのは、あんたの生活見てたらわかるけど」
 母の真奈美が、離島に年頃の男女が集まってお見合いをする
 テレビ番組を真剣に見ている一人娘の紀美子に話しかけた。
 紀美子も年頃といえば年頃である。

「さあね……。さて、蜜柑食べよ。
 もう蜜柑出てるんやね。まだ、秋やで」
「ハウスものみたい。でも、スーパーで味見したけど、
 まあまあ甘かったで」
「あ、そう。蜜柑言うたら、炬燵(こたつ)に蜜柑。
 旬は、冬やもんね」
 紀美子はそう言うと、青い蜜柑を器用に剥(む)いて、
 一切れ口に放り込んだ。

「わっ! 酸(す)っぱ! うちの初恋より酸っぱいやん。
 酸いの当たってしもたわ」
「あんた、初恋からどれだけ時間たってんの? 
 そろそろもう……」
「はいはい。あ、違う! 3番は絶対5番の男子やって!
 8番のイケメンに惑わされたらあかんって。
 はあ……お母さん、あした一緒に映画行こうか?……」