本書の内容
一つにまとまれば何だって成し遂げられる!
2020年6月、朝日新聞に「差別や貧困 目を背けない――ラグビーW杯黒人初の南ア主将コリシさん」という記事が掲載された。2019年、日本で開催されたラグビーワールドカップで黒人初の主将として話題になったシヤ・コリシの南アでの活動とインタビューが胸を打つ。黒人居住区タウンシップに生まれ育ち、食事も満足にとれなかった少年時代、ラグビーがかけがえのないものになっていった。当時ラグビーは白人のスポーツだったが、アパルトヘイト廃止などを経て、いつか代表になりたい、という夢をかなえる。そして、2019年のワールドカップでは、チームの主将を任されることに。結果は優勝という最高のものになったが、アパルトヘイト撤廃後も、差別や貧困問題は置き去りに。コリシは、みずから財団をつくり、コロナ禍で苦しむ人々へ「恩返し」を始める。本書は、コリシに直接インタビューした朝日新聞記者が、南アの過酷な差別や貧困に立ち向かうラガーマンの胸中に迫る。
目 次
第1章 歓喜の瞬間に横たわる現実
第2章 重い扉は開いたが……
第3章 世界一治安が悪い国?
第4章 なぜコロナだけなのか?
第5章 コリシ、魂を語る
著者プロフィール
石原孝 (朝日新聞国際報道部)
(いしはら・たかし)
朝日新聞国際報道部記者。
1981年、兵庫県に生まれる。ロンドン大学東洋・アフリカ研究学院修士課程修了。
2017年8月~2020年8月まで朝日新聞ヨハネスブルク支局長として、アフリカのサブサハラ49カ国の取材を担当。
著書には『堕ちた英雄「独裁者」ムガベの37年』(集英社新書)がある。
担当より一言
「スポーツは、かつて絶望しかなかったところに希望を生み出すことができる」――このネルソン・マンデラの言葉を体現しているのがシヤ・コリシ。過酷な母国の現状に、「声をあげなければいけないときは、いま!」と、行動、発信を続けるラガーマンの声が聞こえる本です。