本書の内容
いくら外国を真似ても、結局日本人は日本人
民俗学者の柳田國男は、太平洋戦争で日本が敗戦したとき、『先祖の話』という本の中で、「あらたな社会を築いていくにあたり、日本の歴史の経歴、慣習の積み重ねを知り、人が自ら考え判断できるようにしなければならない」と述べました。
本書では、そんな柳田のスタンスにならい、日本の歴史を民俗学の視点から俯瞰的に眺め、追跡しながら、どうやっていまのような日本人が育まれたのかを知り、これからの社会のあり方・天変地異すらも忘れてしまう日本人のあり方を考えます。
生活が苦しくても「しかたがない」と我慢する、責任追及をせず問題点をふわっとさせたまま何となく進み、やがて忘れる――そんな日本人の思考や行動の傾向性は「稲作を土台に、律令制+荘園制+武家政権の時代」を経て培われてきました。また、日本にあるのは「宗教」ではなく「信仰と学問」、「民主主義」や「人権」の理解は欧米とは異なる日本流、明治政府の体制は西洋化のと思いきや古代律令国家の体制の復活、など、いわゆる「日本史」を通して学ぶだけでは見えない視点が、民俗学の視点を通すことで浮かび上がってきます。
それを冷静に読み解くことで、世界において自分たちの足場をしっかりと保ち、またよりよい社会にするには何を気をつけなければいけないのか、何を大事にすべきなのかが見えてくるのです。
目 次
序章 民俗学の視点で日本の歴史を見るということ
第1章 日本人のマインドは、縄文ではなく稲作から始まった
第2章 武家政権が起こした社会変化
第3章 信仰、道徳、芸能の形成
第4章 黒船来航、舶来好き日本人の真骨頂
第5章 敗戦、経済大国、そして凋落へ
著者プロフィール
新谷尚紀
(しんたに・たかのり)
1948年、広島県に生まれる。早稲田大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程単位取得。国立総合研究大学院大学・国立歴史民俗博物館名誉教授。社会学博士(慶應義塾大学)。
著書に『伊勢神宮と出雲大社――「日本」と「天皇」の誕生』(講談社学術文庫)、『遠野物語と柳田國男』『民俗学とは何か──柳田・折口・渋沢に学び直す』(以上、吉川弘文館)、『神道入門』(ちくま新書)などがある。
担当より一言
感情的な「日本スゴイ」や「日本オワリ」論にならず、冷静に自分たちを知り、自分たちの国を知り、何を守るべきか、何を変えるべきかを見定めて今後に生かすために、ぜひ読んで頂きたいです。