本書の内容
人生の「不条理」を思索する最良の一冊!
アメリカを代表する哲学者トマス・ネーゲル(1937―)から「人生は可笑しい」という問いを受け取った著者。可笑しい=absordという言葉はカミュが『シーシュポスの神話』の中で「不条理」と訳して流行らせたものだ。著者が研究してきたキルケゴールもこの言葉を使っている。人生の虚しさ、無意味さなどの側面が強調されそうだが、ネーゲルの解釈「(人生は)可笑しい」という観点から、著者がネーゲル哲学と対話する。「生きるか死ぬかの問い」が代表作であるネーゲルと、人生の意味や死をめぐって多方面からの対話の実践報告が本書に集約される。
目 次
序章=終章 人生は可笑しい
第1章 主観性/客観性の哲学
第2章 人生には意味などない
第3章 価値は実在する
第4章 「よい人生」について
第5章 死、あるいはそもそも誕生について
著者プロフィール
藤野 寛
哲学研究者。1956年、京都府に生まれる。京都大学文学部哲学科を卒業後、同大学院文学研究科博士課程学修退学。フランクフルト大学で学位取得。一橋大学大学院教授などを経て、國學院大學文学部教授。専門は哲学(倫理学)、ドイツ現代思想。
著書には『「承認」の哲学』(青土社)、『アドルノ/ホルクハイマーの問題圏』(勁草書房)、『キルケゴール』(岩波書店)、『哲学を愉しく学ぶ』(晃洋書房)、訳書にはショーペンハウアー『自殺について』(岩波文庫)、『フロイト全集17』(岩波書店・共著)などがある。



担当より一言
当初、「よい人生をめぐる哲学ノート」というテーマでお願いしましたが、「人生は可笑しい」がモチーフになった顛末は、著者がネーゲル哲学に魅了されたからです。「生きるか死ぬかの問い」を発端に、私たちの「当たり前」を根底から問い直すネーゲル。今回はネーゲル著『どこでもないところからの眺め』の特別講義をしていただきました。消化不良を起こしながらも、引っかかるほどに味わいが深くなります。