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社会・政治

帰る家がない 少年院の少年たち

中村すえこ:著

定 価:1650円

発売日:2024年8月8日

頁 数:220ページ

判 型:四六判/並製

ISBN:978-4-86581-433-0

本書の内容

「明日はいらない」非行少年たちのリアル!

女子少年院の少女たちを前作で取材した著者が、今度は多摩少年院、久里浜少年院の4人の少年を取材し、少年たちの心と犯罪の背景に迫った。
幼少期から親に虐待されて家出、食うために窃盗や強盗をした少年。友達の身代わりに詐欺の受け子をして抜けられなくなった少年。それぞれの犯罪の裏には、まだ自立できない年齢なのに、頼れる大人も安らぎもないという家庭や社会の問題がある。また、少年院を出ても昔の仲間が足を引っ張る。追い詰められた結果、闇バイトの実行犯として懲役刑を受けた18歳の「特定少年」は「捕まってホッとしている」と言った。自暴自棄になっていた別の少年は「犯罪をして、ダメになったら死ねばいいやと思ってた」――。
頼れる人のいない少年が生きていくには多くの困難がある。だが少年犯罪厳罰化は進み、2022年、改正少年法が施行された。自身も少年院経験者の著者は、彼らが犯罪へと踏み込んでいくのは少年だけの問題ではなく、社会、すなわち大人の問題でもあると語る。人は人とつながることで生きていける。支えがあれば、人は変われる!

目 次

序 章 逮捕を望む少年たち
第1章 虐待されつづけ、明日が見えなかった――コウタ・17歳(窃盗)
第2章 家にいられず、犯罪をして生きてきた――ヒロキ・19歳(傷害・詐欺)
第3章 犯罪の事実を抱えてどう生きるか――タクミ・19歳(詐欺・住居侵入強盗未遂)
第4章 追い詰められ闇バイトで再び犯罪へ――ワタル・18歳(出院後、強盗傷害等で再逮捕)
第5章 支えられて、自分の未来を考えはじめた――その後のコウタ
終 章 生き直せる社会に向けて

著者プロフィール

中村すえこ

(なかむら・すえこ)
1975年、埼玉県に生まれる。15歳でレディース(暴走族)「紫優嬢」の4代目総長となり、多くのメディアに取り上げられるが、抗争による傷害事件で逮捕され女子少年院に入る。17歳で仮退院後、レディースを破門となって生き方を見失い、覚醒剤に手を出し再逮捕。だが、周囲の支えを受け新たな道を歩みはじめ、2度の結婚、離婚を経て4人の子を持つ母となる。2009年、少年院出院者自助グループ「セカンドチャンス!」を仲間とともに立ち上げる。2020年、最終学歴中学校から通信制大学を卒業し、44歳で高校教員免許を取得。現在、高校教師を務める。
少年院での講話活動をつづけるかたわら、少年院の少年・少女たちの思いを伝えて社会を変えたいと考え、2019年映画『記憶――少年院の少女たちの未来への軌跡』、2023年『記憶2――少年たちの追憶と贖罪』を製作・監督し、各地で上映会を開く。その過程で、全国の少年院訪問を達成した。
著書には『女子少年院の少女たち――「普通」に生きることがわからなかった』(さくら舎)、『紫の青春――恋と喧嘩と特攻服』(ミリオン出版)がある。

担当より一言

「児相に行ったり施設に入っても、家に帰っても居場所がなくて。そこから逃げて、犯罪して半グレやって……。いろんな人たちを傷つける中で、気づいたのが、自分が甘えたい、認めてほしいだった」――少年が幼い頃から抱えてきたものを思うとせつない。生き直せる寛容な社会であるために、私たちは何ができるだろうか。