本書の内容
標準治療を断り、最後の一年を最高の一年にした妻の生き方!
『朝日新聞記者の200字文章術』『朝日新聞記者の書く力』で人の心に届く文章、わかりやすく伝わる書き方を説いてきた著者が、自身のいちばん大事な人を失った体験を書き下ろす。妻・直美さんは尋常性乾癬という免疫系の持病がある関係で検診を受けた際、子宮体がんが見つかる。秋のことだ。まだⅠ期。早急に手術するが、子宮を取って終わりではなかった。きわめて稀なことだが、大網(ダイモウ:胃の下側から腸の前に垂れ下がった腹膜)にがん細胞が残っているらしい。すでにステージⅣB。不安を抱えながらも退院。細胞レベルの転移と言うがどうなるか……直美さんは標準治療をしないと決意した。食事療法などをしながら、ふだんの生活に戻り冬を過ごす。翌春になって、長女の出産を手伝いに単身念願のオーストラリアへ。2カ月ほどの最後のしあわせな日々。夏になって、おなかが痛い、早めに帰国したいとSOSが来る。帰国し病院に検査に行った直美さんから「今日余命を聞いたよ」とラインが来る。いつもの「大事な時にあなたはいない状態」。その後、さらに体調がわるくなり、晩夏、最後は自宅で息を引き取った。この間の一年、最後、最高のクオリティオブライフで生きる生き方を直美さんが教えてくれる。章構成は、夏・秋・冬・春・夏・晩夏。
目 次
序 章 心の穴
第一章 夏
第二章 秋
第三章 冬
第四章 春
第五章 夏
第六章 晩夏 その一
第七章 晩夏 その二
第八章 晩夏 その三
終 章 最高の一年
著者プロフィール
真田正明
(さなだ・まさあき)
1956年、大阪市に生まれる。京都大学文学部哲学科を卒業。1980年、朝日新聞入社。警視庁キャップ、プノンペン・ジャカルタ支局長、アジア総局長などを経て論説副主幹。2010年11月から2018年3月まで夕刊のコラム「素粒子」を担当。2021年に退社後、朝日カルチャーセンターで文章教室の講師を務める。
著書には『朝日新聞記者の200字文章術』『朝日新聞記者の書く力』(以上、さくら舎)がある。
担当より一言
直美さんのあっぱれな生き方が印象的です。行間に、さらっとした風が吹いているようです。