本書の内容
炭化、洞、蘇生!身近な大樹が伝える惨禍!
終戦から78年。大空襲・原爆の惨禍を生々しく現代に伝える存在がある。戦災した樹木だ。
戦災樹木は、大空襲・原爆の火災をくぐり抜けた樹木である。炭化したり、洞が残っていたり、歪な形になったりしたまま蘇生しているものもあれば、枯死したまま保存されているものもある。その損傷を残した姿は、当時どのように火災が広がったのかということや、その火災や爆風の激しさを物語る。
本書はこういった戦災樹木を、写真とともに紹介する。東京だけで214本、ほかに戦災樹木と推定されるものは約160本。そのほか、新潟の長岡や栃木の宇都宮、大阪など全国の都市や、広島・長崎の被爆樹木も取り上げる。当時の証言、状況の説明とあわせて読むことで、空襲の恐ろしさ、またそのような状況をもたらした戦争について考える。歴史的労作!
目 次
第1章:東京の戦災樹木
第2章:全国の戦災樹木
*宮城、新潟、福井、石川、群馬、栃木、
神奈川、静岡、大阪、兵庫、和歌山、
岡山、福岡、沖縄
第3章:広島・長崎の被爆樹木
著者プロフィール
菅野博貢
(かんの・ひろつぐ)
1963年に生まれる。筑波大学芸術専門学群環境デザインコース卒業、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、博士(工学)。(財)国際開発センター研究員を経て、明治大学農学部准教授。日本建築学会奨励賞受賞。
著書に『世界の庭園墓地図鑑 歴史と景観』(原書房)、『空間から読み解く環境デザイン入門』(彰国社)、『流動する民族 中国南部の移住とエスニシティ』(共著、平凡社)、『環境デザインの世界 空間・デザイン・プロデュース』(共著、井上書院)などがある。
戦災樹にまつわる情報などは、こちらにお寄せください。
◎環境デザイン研究室
担当より一言
東京の町に、戦争の傷跡がこんな形で身近にたくさんあったのかと驚きます。写真でも迫力のある戦災樹木たちですが、ぜひ本書を読まれたら、実際の大樹を見に行ってみてください。戦争は怖い、悲惨だ、というだけではなく、その戦争はなぜ起こったのか、なぜこんなふうに町が空襲されたのかというところまで、考えるきっかけになったらと思います。