本書の内容
そうだったのか!ムダの先にある豊饒の世界
本書は「ハチドリのひとしずく」を日本に紹介者した著者が、「ムダ」を切り口に、暮らし、労働、経済、環境、テクノロジー、遊び、教育、人間関係などについて思索する。
コロナ禍では「不要不急」がひとつのキーワードとなった。また「コスパ」「タイパ」、そんな考え方が日常を侵食している。しかし、要不要とはいったい何だろう。身のまわりのすべてのことを、「役に立つかどうか」「効率がいいかどうか」「払った対価に見合っているかどうか」、そんなモノサシで測ってよいものだろうか。
その価値観で捨てた「ムダ」なもの、それは本当に「ムダ」なのか?誰にとって?何にとって?そもそも「ムダ」で何が悪いのか?
目 次
序章:ムダについて考えるということ
第1章:「ムダを省く」ということ
第2章:「ナマケモノ」の視点で経済成長を見る
第3章:複雑化した世界でのシンプルな暮らし
第4章:働き者礼讃社会に抵抗する
第5章:ムダと孤独とテクノロジー
第6章:ムダな抵抗は、してもムダ?
第7章:スローライフはムダでいっぱい
第8章:答えは足もとの土にある
第9章:ぼくたちは、遊ぶために生まれてきた
第10章:教育とムダをめぐるコペルニクス的転回
第11章:あなたは「ムダな人」ですか?
終章:愛とは時間をムダにすること
著者プロフィール
辻 信一
(つじ・しんいち)
1952年、東京に生まれる。文化人類学者。N G O「ナマケモノ倶楽部」代表。
1977年北米に渡り、カナダ、アメリカの諸大学で哲学・文化人類学を専攻、1988年米国コーネル大学で文化人類学博士号を取得。1992年より2020年まで明治学院大学国際学部教員として「文化とエコロジー」などの講座を担当。またアクティビストとして、「スローライフ」「ハチドリのひとしずく」「キャンドルナイト」「しあわせの経済」などの社会ムーブメントの先頭に立つ。
著書に『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社ライブラリー)、『「ゆっくり」でいいんだよ』(ちくまプリマー新書)、『「しないこと」リストのすすめ』(ポプラ新書)など、共著に『降りる思想』『弱さの思想』『「雑」の思想』『「あいだ」の思想』 (以上、大月書店)などがある。
担当より一言
効率のよさが大事なときもありますが、すべてにおいてではないはず。「役に立たない」という言葉に対する反論は、「いや、(こういう理由で)役に立つ!」ということではなく、「役に立たなくてもよくないですか?」。みなさん、ムダを愛でていきましょう!