本書の内容
戦争に翻弄されたラガーマンたちの青春の秘史!
「戦争に行く前に、ライバルと最後の試合がしたい」昭和18年秋、学徒出陣の直前、非公式かつ内密にあるラグビーの試合が行われた。東大―京大戦である。惜別の思いで迎えたノーサイド。その後、学生たちは戦場へ赴いた――。
2019年のW杯で社会を湧かせた日本ラグビーだが、じつは戦前から広く親しまれていたことはあまり知られていない。江戸時代末に横浜から始まった日本ラグビーは、学生たちの熱意により京都に伝播し、東西で大きな盛りあがりを見せていた。やがて日本は戦争に突入、戦局の悪化に伴い試合は次々と中止に。学徒出陣、特攻、原爆、シベリア抑留――楕円球を追った若者たちは、否応なしにその渦に巻きこまれていく。
本書では、日本ラグビーの黎明期に創部し、関西を中心にラグビーの興隆に大いに貢献した京都帝国大学(現・京都大学)ラグビー部を主人公に、東大・慶大・早大・明大・同志社大などのライバル校の歩みも交え、戦前・戦中のラガーマンの軌跡をたどる。
目 次
序章:日本ラグビーの産声
第一章:ラグビー部、続々誕生
第二章:ラグビーブームの到来
第三章:京大、初優勝へ
第四章:白獅子の黄金時代
第五章:戦前ラグビーの国際交流
第六章:日中戦争とラグビー
第七章:ラグビー発祥国との戦争
第八章:ラストゲーム
第九章:原爆とラガーマン
第十章:炎は散れども消えず
著者プロフィール
早坂 隆
(はやさか・たかし)
1973年、愛知県に生まれる。ノンフィクション作家。
著書にミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞した『昭和十七年の夏 幻の甲子園』(文藝春秋)、『昭和十八年の冬 最後の箱根駅伝――戦時下でつながれたタスキ』(中央公論新社)、『指揮官の決断 満州とアッツの将軍 樋口季一郎』『永田鉄山 昭和陸軍「運命の男」』、『ペリリュー玉砕』(文春新書)、『昭和史の声』(飛鳥新社)、シリーズ累計100万部を突破した『世界の日本人ジョーク集』(中公新書ラクレ)、などがある。
担当より一言
戦争について教科書にあるのは、戦時下の厳しい生活のようす、戦争の悲惨さなどの記述です。その記述の裏に、いまの私たちと同じように、笑い、泣き、大好きなことに仲間と打ち込んでいた若者たちの命の躍動があったことを、本書は教えてくれます。戦争経験者が次々とこの世を去り、生の声を聴くのが難しくなるなか、細い糸をたぐるように関係者への取材を行って書かれた、著者渾身のノンフィクションです。