本書の内容
「生ききるんやで」――そう彼は言った。
父親の愛に恵まれなかったことから精神を病み、自傷行為を繰り返し、風俗の世界に身を置いた17歳の少女。生きることに絶望し、死を願っていた彼女は、ある日、8歳年上の劇団員の青年と知り合う。明るく豪快な青年との交流を通じ、徐々に生きる力を取り戻していく少女は、やがて青年が重度の心臓病を抱え、いつその命が消えても不思議ではない、生死のライン上を常に歩いていることを知る――。
病いを抱えながらも理学療法士として、認知症のお年寄りのケアに励む青年が直面した病院内部の実態と自身の生い立ちを描きながら、青年に感化され「死への願望」から解き放たれていく少女の心の回復を綴るノンフィクション。
目 次
十七歳の風俗嬢
「二十歳まで生きられない」ヒーロー
悲鳴を上げる心臓
小児病棟の「天使」たち
劇団という家族
心臓病の理学療法士と精神科病院の現実
余命
おわりに――私の家族のこと
著者プロフィール
咲セリ
(さき・せり)
1979年生まれ。思春期の頃から自傷、自殺念慮、依存に苦しみ、強迫性障害、境界性パーソナリティ障害、双極性障害などを抱える。2004年、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、在宅WEBデザインの仕事をする傍ら、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動などをしている。
主な著書に、『死にたいままで生きています。』(ポプラ社)、精神科医・岡田尊司氏との共著『絆の病 境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日』(KADOKAWA)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました。』(ミネルヴァ書房)などがある。
担当より一言
17歳の少女の心を救った青年は、自らも重度の心臓病を抱える理学療法士。そんな彼が赤裸々に明かす、医療現場の現実は胸に迫るものがあります。