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歴史・哲学・宗教

「完熟」の老い探究

プラトン・アリストテレス・キケロも悶悶

瀬口昌久:著

定 価:1760円

発売日:2021年10月8日

頁 数:240ページ

判 型:四六判/並製

ISBN:978-4-86581-313-5

本書の内容

人生、いかに老い、いかに死ぬか。

2000年以上前の古代ギリシアでは森羅万象が哲学の対象となったが、「老い」もその一つ。「老年の哲学」というジャンルがあった。人はいかに老い、いかに死ぬか。古代ギリシア・ローマの哲学者や文学作品などから、「老い」をめぐる百花繚乱の考え方や味わい深いエピソードを集めた。古代ギリシアにも認知症があり、老いを免れたいと願う人々がいて、神々は性的快楽の男女差を論争した。老いについて、プラトンはポジティブ老年観、アリストテレスはネガティブ老年観を示している。師弟関係にあり古代哲学者の双璧ともいえる二人が正反対なのが面白い。また、死んだらどうなるかという問いに、プラトンは、魂は不死で輪廻転生する、原子論は魂も肉体もバラバラの原子になると語った。プラトンいわく「哲学とは死の練習」なのだ。ちなみにプラトンは80歳で書きながら死に、ソクラテスは70歳で刑死、アリストテレスは62歳で病死、キケロは63歳で暗殺、セネカは皇帝ネロの命で69歳にて自害した。哲学者の死にざまも興味深い。理想の死生観として、ローマの哲学者キケロの言葉に耳を傾けたい。「果物でも、よく熟れていれば、みずから落ちるように、命もまた、老人からは成熟の結果として取り去られる」――。完熟の老いをいかに迎えるか。人生と向き合い、黄落期を豊かにする一冊!

目 次

第1章 古代から人は「老い」に悩んでいた
第2章 老年期はプラスかマイナスか──プラトン対アリストテレスの老年観
第3章 老化、病気、性、死を考える
第4章 よく生き、よく考え、よく行動する
第5章 哲学で手に入れる完熟の老い

著者プロフィール

瀬口昌久

(せぐち・まさひさ) 
1959年、兵庫県に生まれる。1983年、京都大学文学部西洋哲学史卒業。1991年、京都大学大学院文学研究科博士課程修了。名古屋工業大学教授。博士(文学)。
著書には『魂と世界――プラトンの反二元論的世界像』(京都大学学術出版会)、『老年と正義――西洋古代思想にみる老年の哲学』(名古屋大学出版会)、共著に『ルクレティウス「事物の本性について」――愉しや、嵐の海に』、訳書に『古代哲学』(以上、岩波書店)などがある。

担当より一言

プラトンはさまざまな国家システムについて書いており、金持ちと貧乏人との格差は、最大でも4倍までにする、としているそうです。日本の所得格差は1967年には約8倍でしたが、2002年段階で168倍に広がったとのこと。反プラトン的社会が実現してしまった現代をプラトンが見たら何というでしょうか。人も国家も上手に老いたいものです。