本書の内容
近代スポーツ誕生! 「豊中」の汗と涙と笑いのドラマ!
「もしも豊中運動場がなければ、夏の甲子園大会も、春のセンバツ大会もなかったかもしれない」――。1913(大正2)年、現在の大阪府豊中市にオープンした豊中運動場は高校野球発祥の地だ。東西150m、南北140m、オープン当時はフェンスもなければ観客席もなかったこの運動場で、1915(大正4)年に第1回全国中等学校優勝野球大会(のちの夏の甲子園大会)が開かれた。ラジオもテレビもなく、移動は列車で昼夜揺られたこの時代、全国統一の野球ルールはまだなく、応援はたいてい大乱闘になった。球審ははかま姿で、ファウルチップがはかまの裾で止まることもあった。参加校は10校だったが、日本一を決める全国大会は野球人気に火をつけ、その後の隆盛につながる。高校野球だけではない。高校ラグビー、高校サッカー、陸上競技、バレーボール、バスケットボールと、日本初の大会はみな豊中で開かれた。輝かしい歴史にもかかわらず、豊中運動場の存在は人々の記憶からも、スポーツ界の記録からも、ほとんど消し去られてしまった。わずか9年間の存在だった幻のグラウンド・豊中運動場。日本近代スポーツ誕生の原点だったその歴史、アスリートと観客たちの奮闘エピソードがいま明らかに!
目 次
第1章 高校野球ここに始まる
第2章 東洋一の総合グラウンド誕生
第3章 高校ラグビー・サッカー発祥の聖地
第4章 日本初の陸上選手権を開く
第5章 豊中から世界が見えた
第6章 スポーツを文化に育てる
著者プロフィール
坂夏樹
(さか・なつき)
1961年、大阪府に生まれる。大阪、京都、兵庫、愛知、山陰などでの勤務経験がある全国紙の元記者。大阪では、行政や選挙をメインに取材、京都では、警察、司法、行政などを主に担当した。一方で、バブル経済期の闇社会の実態に迫る特命取材にたずさわったほか、平和問題や戦争体験、人権問題を取材テーマにした。
著書には『千二百年の古都 闇の金脈人脈』『命の救援電車』(以上、さくら舎)がある。
担当より一言
大正時代、野球はまだ「学生の道楽」と見られていた。のちのラグビーの第1回全国大会では大学生と高校生が対戦した。陸上競技大会では、観客はハードルや競歩を初めて見て不思議がった。近代スポーツ黎明期の、ほほえましくも楽しい貴重なエピソードが満載!