本書の内容
同時通訳者の超一流の英語&日本語!
1969年のアポロ11号の月面着陸の中継を同時通訳し、一般の人たちに「同時通訳」というものを知らしめ、神といわれた同時通訳者・西山千(セン)。その頃著者は大阪でサラリーマンをしながら英語の講師などもしていたが、西山千に声をかけられ、アメリカ大使館で同時通訳者として共に働くことになる。当時のアメリカ大使館はまるで植民地のようで、また人を機械のように使い捨てる風習、他人を蹴落としてのぼっていく実力主義から、殺伐とした空気が漂っていた。そのなかで著者は、センから猛烈な「しごき」を受けながら、同時通訳の極意を学んでいく。しかし、少しのミスも許されない環境で、やがてセンも著者も大使館を追われていく……。「通訳とは単に言葉を訳すのではなく、そのウラにある思いや文化も汲んで訳さなければならない」「通訳とは、シンボルの交換である」通訳名人・西山千のきらめくような言葉から、同時代に活躍した村松増美をはじめとするほかの通訳者たちの言葉も交えつつ、同時通訳の神経をすり減らすような厳しさ、そのなかにある喜びを語る。戦勝国と敗戦国の狭間で生きる、同時通訳者たちの過酷な宿命!
目 次
プロローグ
第1章 同時通訳・蛹期間
第2章 植民地・アメリカ大使館
第3章 天才センとの日々
第4章 同時通訳者の光と影
第5章 崖っぷち
第6章 同時通訳者、それぞれの運命
エピローグ
著者プロフィール
松本道弘
(まつもと・みちひろ)
1940年、大阪府に生まれる。国際ディベート協会会長。関西学院大学を卒業し、日商岩井、アメリカ大使館同時通訳者、日興証券(国際業務役員秘書)、NHK教育テレビ上級英会話番組「STEPⅡ」講師などを経る。世界初の英語による異文化コミュニケーション検定「ICEE」を開発。日本にディベートを広めたことでも知られる。インターネットテレビ「NONES CHANNEL」で「GLOBAL INSIDE」に出演中。英語道の私塾「紘道館」館長。
著書には『日米口語辞典』(共編、朝日出版社)、『速読の英語』『超訳 武士道』(以上、プレジデント社)、『中国人、韓国人、アメリカ人の言い分を論破する法』(講談社)、『同時通訳』(角川学芸出版)『難訳・和英口語辞典』『難訳・和英「語感」辞典』『難訳・和英ビジネス語辞典』(以上、さくら舎)など170冊近くがある。
担当より一言
著者の体験や、西山千氏など時代を彩った同時通訳者たちのエピソードから、言葉という文化が違う者同士のコミュニケーションの難しさ、また「代弁する」ということの難しさが伝わってきます。近年では自動翻訳(通訳)機も開発されていますが、果たしてAIがどこまで、人間同士のコミュニケーションを仲介できるようになるのか。いろいろと考えさせられる1冊です。