本書の内容
米軍資料から浮かび上がる戦略爆撃の実態!
敗戦直後の1945年9月、米国戦略爆撃調査団が1000人体制で日本各地の徹底調査をはじめた。米軍による「戦略爆撃」の検証である。太平洋戦争末期のB29による本土空襲では東京大空襲が有名だが、空爆は全国でおこなわれた。大阪大空襲、神戸大空襲、名古屋大空襲などでも多数の死傷者が出、犠牲者は全国で50万人といわれる。
本書は米国戦略爆撃調査団文書と呼ばれる膨大な第一級の一次史料を著者が時間をかけてひもとき、大阪、神戸、名古屋、富山、和歌山などの大空爆の実態に迫ったものだ。<作戦任務報告書><空襲損害評価報告書>などの米軍資料ほか図版60点超を掲載。それらには、米軍がいかに効率よく空爆するか、いかに広範囲を焼き尽くすか冷徹に邁進する様が記されている。「無差別爆撃」といわれる本土空襲の実態は明確に民間人を狙った空爆であった。最終章には、調査団が敗戦直後に、降伏時や戦争についての思いなどを聞いた貴重な全国3500人インタビューの抜粋も収録。
目 次
序 章 本土空襲――民間人を狙った空爆の実態
第1章 大阪が燃えた日 1945年3~8月
第2章 神戸、阪神が燃えた日 1945年3~8月
第3章 故郷が燃えた日 1945年1~8月
第4章 敗戦の陰で 1945年8~12月
著者プロフィール
松本泉
(まつもと・いずみ)
1961年、大阪府に生まれる。1986年に毎日新聞社に入社。京都支局、大阪本社社会部、松江支局長、大阪本社事業部長、同運動部長、論説委員を経て、現在は大阪本社社会部部長委員。2013年から同志社大学嘱託講師を務める。社会部記者時代から平和報道に関わり、戦争体験者の証言や太平洋戦争時の市民生活などの取材をつづけてきた。「少国民の夏」「焦土から」「消えた卒業式」など多数の連載企画を手がけたほか、平和や戦争をテーマにしたシンポジウムに参加している。
担当より一言
著者が丹念に集めた空襲体験者の声には、神戸大空襲のときに須磨海岸に避難した人の証言もある。「道路は逃げる人でいっぱい。でも泣いたり叫んだりする人は一人もいない。みな無言でした」--パニック映画とは異なる事実の重みが伝わってきます。