本書の内容
新聞の限界は!新聞にしかできないことは!
日本社会に内在するさまざまな問題に鋭く切りこむ山本七平。不世出の教養人が繰り広げる本格的「新聞紙学」(「文藝春秋」誌上に連載した原稿をもとに)。「新聞は沈黙を許されない気の毒な存在」「なぜ社説を読むのが苦痛なのか」「新聞は角栄的体質をもっている」「三ズ主義的報道」「東京紙が存在する?(全日本の東京化問題)」「言文一致から顔文一致へ」などなど、読者離れが著しい「新聞」というメディアにメスを入れる。ロッキード事件や成田報道など実際の記事を例に、どこが問題なのか、何が欠落しているのかを具体的に示す。1980年代に書かれたものだが、タイムリーな内容になっている。初の単行本化!
目 次
序 章 沈黙が許されない新聞
第1章 正義の体質
社説を読む苦痛
新聞の「角栄的体質」……
第2章 透けて見える問題な日本的発想
「風派」新聞ととられても
三ズ主義的報道……
第3章 オモテとウラ
言葉で殺された人
新聞の限界……
第4章 テレビ化の波
「実情」ではなく「事実」の報道を
新聞はもう「情報」たり得ない……
終 章 活字文化の生き残り策
著者プロフィール
山本七平
(やまもと・しちへい)
1921年、東京都に生まれる。1942年、青山学院高等商業学部を卒業。野砲少尉としてマニラで戦い、捕虜となる。戦後、山本書店を創設し、聖書学関係の出版に携わる。1970年、イザヤ・ベンダサン名で出版した『日本人とユダヤ人』が300万部のベストセラーに。以後、「日本人論」で社会に大きな影響を与えてきた。その日本文化と社会を分析する独自の論考は「山本学」と称される。評論家。山本書店店主。1991年、逝去。
著書には『「空気」の研究』『私の中の日本軍』(以上、文藝春秋)、『日本はなぜ敗れるのか』(角川書店)、『帝王学』(日本経済新聞社)、『論語の読み方』(祥伝社)、『なぜ日本は変われないのか』『日本人には何が欠けているのか』『日本はなぜ外交で負けるのか』『戦争責任と靖国問題』『精神と世間と虚偽』『戦争責任は何処に誰にあるか』『池田大作と日本人の宗教心』『渋沢栄一 日本の経営哲学を確立した男』(以上、さくら舎)などがある。
担当より一言
ロッキード報道や成田報道を例に大新聞を俎板にのせ、鮮やか問題点を指摘。かつ衰退する活字文化をどうすれば再生させられるかを考案。これまでとひと味ちがう「山本学」が展開されています。実情ではなく事実の報道を! これは読者として持っていたい視点だと思いました。