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文芸・一般

恋歌(れんか)

王朝の貴族たち

小林一彦:著

定 価:1500円+税

発売日:2018年9月4日

頁 数:240ページ

判 型:四六判/並製

ISBN:978-4-86581-163-6

本書の内容

千年の時を超えて胸に迫るあまたの恋情!

王朝時代、平安京の夜空をたくさんの恋歌が、現代のメールのように飛び交っていた。通い婚のため男を待つしかない女の切なさ、許されざる恋に涙する男、共寝の翌朝の別れのつらさ……人々は思いの丈を歌にのせて届けた。

恋のはかなさを詠んだ「白露も夢もこの世もまぼろしもたとへて言へば久しかりけり」(和泉式部/どれほどはかないものであっても、恋に比べたらすべてが久しい)。「なげけどもかひなかりけり世の中に何にくやしく思ひそめけむ」(よみ人しらず/いまさら嘆いてもしかたないけど、どうしてあなたを愛してしまったのか)。藤原定子(中宮定子)の辞世の歌「夜もすがら契りしことを忘れずは恋ひむ涙の色ぞゆかしき」(夜通し約束されたことをお忘れでないのなら、わたしを恋しく思って流される涙の色を知りたいものです)など、悲しさ極まると血の涙が流れるとされた時代から時が経っても胸を打つ。

百人一首、古今集、金葉集などさまざまな歌集から選りすぐった和歌と歌人の生涯を、叙情ゆたかに、コンパクトに紹介。典雅に詠まれた三十一文字から、短い人生を恋に歌に生きた王朝びとの哀歓に、時空を超えてひととき思いを馳せる一冊です。

目 次

第一章 黒髪の乱れ
第二章 恋こそ祈り
第三章 愛の余韻
第四章 星夜のあわれ
第五章 あの世の逢瀬

著者プロフィール

小林一彦

(こばやし・かずひこ)
1960年、栃木県に生まれる。京都産業大学文化学部教授・日本文化研究所長。慶應義塾大学文学部卒業、同大学院後期博士課程単位取得。和歌文学会常任委員、中世文学会委員、日本文学風土学会常任理事、全国大学国語国文学会委員などを歴任。
教育・研究・執筆活動のかたわら、古典の魅力をわかりやすく伝える講演活動にも力を入れており、幅広い年代を対象に古典の語り部として各地を歩く。
著書には『鴨長明と寂蓮』(笠間書院)、『続拾遺和歌集』(明治書院)、『鴨長明 方丈記』(「100分de名著」ブックス、NHK出版)などがある。 

担当より一言

「どうしてあなたを愛してしまったのか」――、王朝びとの思い、嘆きが胸に迫る。思わずため息の出るせつない恋歌がたくさんあります。感情的にならないことが推奨される今ですが、こんなふうに情感たっぷりの世界も豊かで素敵です。