本書の内容
山本七平の日本を見る目・思考は不滅です。
- われわれはいとも簡単に「民主主義」と「全体主義」、「民主制」と「独裁制」といった分類をするが、それには何か根拠があるのか、またそういう分類は成り立つのか。
- なぜ「天皇機関説問題」を取りあげるのか。この問題は、単なる言論弾圧事件とはいえない。その背後にあったものは何か。これは、第二次大戦直後の「民主化」時代と一脈通ずるものがある。歴史に終着駅はない。
- 日本では総政治化と非政治化が13〜15年周期で繰り返されてきた。たとえば、日本人は、明治維新で前の歴史を消し、戦後に戦前の歴史教科書を抹殺してしまった。13~15年周期で変革の動きが起きても、なぜ頓挫してしまうのか。
- 日本には「個」の組織化である「民主主義」の基礎であるべき組織(システム)という概念がない。組織は常に目的をもつ。一方家族は自らの崩壊を防ぐことが第一の目的である。組織的家族集団の日本は社会変革にどう対処していけばいいのか。
目 次
第一章 | 「民主的」か「非民主的」かを超えて |
(1) | 正統か異端かを超えて |
(2) | 官憲主義と全体主義 |
(3) | 歴史の中の共通パターン |
(4) | 日本に西欧型ファシズム時代はなかった |
(5) | 「暗黙の了解」崩壊の不安 |
第二章 | 「天皇機関説排撃運動」に見る歴史の繰り返し |
(1) | 言論弾圧事件ではなかった |
(2) | 背後にあったものは何か |
(3) | 「教育勅語」という強い根 |
第三章 | 十五年周期で循環する日本人の政治意識 |
(1) | なぜ日本には「終戦祭り」がないのか |
(2) | 「歴史的現在」感覚の欠如 |
(3) | 終戦と安保の共通現象 |
第四章 | 変革なき組織的家族社会の深層 |
(1) | 西欧的正当化と日本的調和 |
(2) | 「自由」と「組織」の欠落 |
(3) | 変革への模索 |
著者プロフィール
山本七平
(やまもと・しちへい)
1921年、東京都に生まれる。1942年、青山学院高等商業学部を卒業。野砲少尉としてマニラで戦い、捕虜となる。戦後、山本書店を創設し、聖書学関係の出版に携わる。
1970年、イザヤ・ベンダサン名で出版した『日本人とユダヤ人』が300万部のベストセラーに。以後、「日本人論」で社会に大きな影響を与えてきた。その日本文化と社会を分析する独自の論考は「山本学」と称される。評論家。山本書店店主。1991年、逝去。
著書には『私の中の日本軍』『「空気」の研究』(以上、文藝春秋)、『日本はなぜ敗れるのか』(角川書店)、『帝王学』(日本経済新聞社)、『日本人とは何か』『昭和天皇の研究』(以上、祥伝社)など、いずれもベストセラーになっている。
担当より一言
民主党政権が迷走をきわめる、このタイミングで!の出版になりました。『日本人とユダヤ人』で「日本人は生き残れるのか?」を徹底考察した目は、ここでも日本・日本人の行き方(生き方)に肉迫しています。歴史が語らずにいられない声を聞きとってください。