ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第87回

子を思ひゐしとき子が来春の暮

(こをおもいいしときこがくはるのくれ)

安住 敦

(あずみあつし)

この句を読んだとき、映画「男はつらいよ」の主人公・車寅次郎こと
寅さんのことがふと頭を過(よぎ)った。

映画のなかでも身内が、旅に出ている寅さんのことを案じていると、
それを察知したかのようなタイミングで、
故郷の葛飾柴又(かつしかしばまた)の団子屋に
不意に寅さんが姿を見せるのである。
それは映画だから都合よく設定していると言えばそうかもしれないけれど、
でも実際「以心伝心」でこの句のようなことが起こりうると思う。

ちょっと話は逸(そ)れるけれど、東京で暮らしている僕は、
ある日父が臥(ふ)せっている夢を見たとき、
不吉な予感がしたので実家に電話してそのことを伝えた。
電話に出た母から
「あれ。いまお父さん、体調崩して会社休んで寝てるわ。
不思議なこともあるもんやねえ」
という応(こた)えが返ってきたのである。

東京と和歌山という物理的な距離が離れていても
親子には不思議なテレパシーが働くものだ。
この句も春の夕暮れどきに、そんな親子だけに通じる第六感が働いたのだろう。