ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第85回

茄子漬の色鮮かに母とほし

(なすづけのいろあざやかにははとおし)

古賀まり子

僕が大学生だった頃、夏休みに故郷の和歌山に帰省するのが、
一番胸が躍(おど)ったことかもしれない。
故郷を離れてこそ、そのありがたさが初めてわかるものである。
帰省の楽しみの一つに、番茶の茶粥(ちゃがゆ)と
ぬか漬けの漬物をいただくことが挙げられる。
どちらも母の手作りである。
ささやかではあるけれど、これがたまらない。

和歌山では茶粥のことを「おかいさん」と言って親しまれている。
「お粥」が訛(なま)って「おかい」になり、
「さん」を付けて「おかいさん」になったのだろう。
「茄子漬」も「胡瓜(きゅうり)漬」も夏の季語で、
どちらもおかいさんと相性がいい。
古漬けでも、浅漬けでも美味しいけれど、
この句のように茄子の紫が「色鮮かに」出たものは
とてもよい漬かり具合である。

この句は自分で茄子漬をこしらえて、その色に遠くの母を想っている。
鮮やかな紫色に母の柔和(にゅうわ)な笑顔が重なって
見えてくるようだ。
同時にかつて、母が漬けてくれた茄子の味をも恋しがっているようでもある。