ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第56回

おでんの底に卵残りし昭和かな

(おでんのそこにたまごのこりししょうわかな)

曾根毅

(そねつよし)

僕はおでんが好きで実家に帰ると、
必ず1回はおでんを母にリクエストする。
それは子どもの頃に食べた変わらぬ家庭の味でもあるからだろう。
そういう意味でいうと、
コンビニのおでんは僕にとって全くの別物である。
子どもの頃に食べた、よく出汁(だし)の染みた関西の実家のおでんが、
僕にとってのほんとうのおでんである。

好きなおでんの具はいくつかあるけれど、卵は格別である。
いつも最後あたりに食べる。
少なくなった具のなかで、卵がごろんと鍋の底に残っていると、
不思議な存在感すらある。
いろんな具のなかでぶつかり揉(も)まれて、
少し欠けたりしている卵には妙な哀愁さえ感じられる。

この句はそんな卵が鍋底に残っている光景を捉えて、
昭和という時代を詠嘆(えいたん)しているのである。
平成の世も終わろうとする時代には
卵は安価に手に入る食材だが、
昭和のある時期には卵がとても貴重であった。
そんな激動の昭和がこの卵1個に見て取れる。