ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第40回

どの道も家路とおもふげんげかな

(どのみちもいえじとおもうげんげかな)

田中裕明

(たなかひろあき)

この句の「げんげ」とは「れんげ」のことで、
僕は幼いころかられんげ畑を身近にして育った。
蜜蜂(みつばち)がぶんぶん唸(うな)るなかを走り回ったり、
寝っ転がったりして
れんげ畑の甘い蜜のなかで無邪気に呼吸をしていたのである。

大人になってその光景を思い出すと、
その蜜の香りと紅の花の広がりから、郷愁が立ち上がってくる。
そしてまだ若い父と母の姿が浮かび上がってくるのである。

「どの道も家路とおもふ」という表現に少し解説を加えるならば、
一面のれんげ畑を見渡していると、
その周りに伸びている春の道々は、
どれもあの日の家路へとつながり続いているように思える
という感じだろうか。

しかしそう思うだけで、
実際はどの道も家路へとはつながっていないのである。
どれも幻の道であり幻の家路なのだ。
れんげがその幻を見せているのである。
でも幻でもいいから、そんなれんげに出会いたいと思うのは僕だけだろうか。