ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第29回

冷麦やさらりとかはす妻の愚痴

(ひやむぎやさらりとかわすつまのぐち)

磯村光生

(いそむらこうせい)

皆さんは震えを抑えながら、真冬の縁側で
冷麦を食べたことがあるだろうか?
ぼくはある、
と言っても自分から好んでそうしたわけではなくて、
CМの撮影のために食べたのである。
5月頃から流すCМに備えて、冬場に撮影したのだ。

5月頃からCМが流れ出すということは、
もちろん冷麦は夏の季語である。
冷素麺(ひやそうめん)もしかり。
季語を知ると、食べ物の旬の時期もわかるようになるからいい。

さて、この句には冷麦を食べている夫婦が詠(よ)まれているが、
妻は愚痴をこぼしている。
何の愚痴かは省略されているから、
読み手が想像するしかない。
夫の態度に対する愚痴、主婦としての愚痴、
共働きの愚痴、子どもの教育に対する愚痴、
いろいろあり得る。

しかし、夫は冷麦をつるりとすするように、
さらりと愚痴をかわす。
どうやら長年連れ添った夫婦に見える。
妻の愚痴のかわし方を心得ているようだ。
妻も愚痴を吐き出すだけ吐き出すと
すっきりして冷麦をすすり終えるのだろう。