ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第26回

独り出て道眺めゐる盆の父

(ひとりでてみちながめいるぼんのちち)

伊藤通明

(いとうみちあき)

ぼくはお盆と聞くと、不思議な安らぎと親密な空気を感じる。
それは小学生の頃に必ず、
熊野本宮(くまのほんぐう)の祖母の家に親戚が集まって、
わいわい賑(にぎ)やかになった思い出が
今でも胸のなかに残っているからかもしれない。

そしてもう一つ言えば、ぼくの誕生日が8月12日で
お盆の直前だから、よけいに胸の高鳴りがあった。
親戚のみんなに「おめでとう」と言ってもらえるからだ。

でも、お盆はどこかやっぱり寂しい。
体感的にはまだまだ暑いが、
しかしひぐらしもしきりに鳴いて、
すでに秋の初めの風が微(かす)かに吹きはじめる。

この句は、そんな初秋の道に出て、
父親が佇(たたず)んでいる姿が描かれている。
「独り出て」、道を眺めながらこの父は何を思っているのか。
ただ道を眺めているのではないだろう。
その道にはきっと亡き人の面影を立たせているに違いない。
亡き人の魂(たましい)がすっと盆の道に現れて、
この家に帰ってくるのを父は待っているのだろう。