ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第17回

入園児父が与えし名を胸に

(にゅうえんじちちがあたえしなをむねに)

船津りん一

ぼくは3歳のとき、家から離れた幼稚園に入園したのだけれど、
バスで通わなければならなかった心細さが
今でも心の中に残っている。

とにかく寂しかったのだ。
たった一人で知らない人たちがたくさんいる幼稚園に通うことが。
乗り場までは母が付いてきてくれたが、
やがてバスが到着すると、先生にいざなわれて、
一人で乗り込まなければいけない。
もうその時点で泣いていた。

このバスに乗って、いったいどこに行くのだろう。
なぜ、母とはここで別れなければいけないのか。
幼稚園に行くことはなんとなくわかっていたはずなのに、
何かしらまだよく理解していない状況で、
バスに乗せられるのは寂しくて怖かったのだ。

号泣しながらバスに乗ったぼくは、
だんだん遠ざかっていく母に車窓から手を振ったことを覚えている。
そんなぼくの胸にも、「父が与えし名」が書かれた名札があった。
いや、父と母が考えた名前だったか。
「入園」が春の季語である。