ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第16回

母さんと吾を呼ぶ夫と豆の飯

(かあさんとあをよぶつまとまめのめし)

渡辺純枝

(わたなべすみえ)

自分のところの家族を振り返ってみてもそうだが、
父が母のことを名前で呼んでいる場面に出くわさない。
やはり父は、この句のように
「母さん」とか「お母さん」と母のことを呼んでいる。

どうしてだろう。
照れ臭いのか、呼び慣れないのか、
それとも子どもができて、夫婦生活が長くなると、
自然に「母さん」「父さん」とお互い呼び合うようになるのだろうか。
むかしは名前を呼び合っただろうに。

この句は古語的な読み方をしないといけない部分が二つある。
「吾」と「夫」である。
「吾」は、「あ」「わ」「われ」などの読み方があるが、
この句では一音の読みでないと五七五にならないので
「あ」か「わ」と読むのが適当である。
「夫」は古語では「つま」と読むからややこしい。
この句でも「つま」と読むとリズムがいい。

えんどう豆を炊きこんだ夏の季語「豆の飯」を夫婦で食べている。
ご馳走でなく日常の食卓にのぼる豆飯が、
ふだんの呼び名になってしまった「母さん」と緩(ゆる)やかに響き合う。