ねこもかぞく
著者紹介(解説):堀本裕樹 著者紹介(マンガ):ねこまき

今日の俳句

第9回

すぐ寝つく母いとほしや隙間風

(すぐねつくははいとおしやすきまかぜ)

清崎敏郎

(きよさきとしお)

もろもろの家事を終えた母が、「ちょっとだけ休憩」とつぶやいて、
冬ならば炬燵(こたつ)に入って
お茶を飲みながら新聞などを読んでいるかと思ったら、
いつの間にか寝ているという場面に出くわすことが、
ぼくの家族の風景でもたまにある。

その寝込んでいる母の表情を見ていると、なんだかあどけなく
「いとほしや」という感情が湧きあがったりするので、
この句の心情に静かに頷(うなず)けるのである。
「すぐ寝つく」というところが
よけいに母のことが愛おしくなる理由であろう。
気づいたら、もう寝ている。
疲れているのか、それとも老齢のせいか、
自分を育ててくれた母の寝つきの良さに、
ある悲しみと愛おしさが胸に込み上げてくるのだ。

そしてこの句を哀れにしているのが、
冬の季語「隙間風」である。
気密性のあまりよくない日本家屋では
戸や障子などの隙間から風が漏れて室内に入り込んでくる。
その風からけなげに身を守るように
母は丸く小さくなって眠っているのである。