センスよく生きようよ
著者紹介:秋川リサ

第15回

暑い夏

ワールドカップのときには、にわかサッカーファンになる私だ。
今回は夜中の試合が多く、しかも熱帯夜。
昼夜逆転の生活を何日か続け、挙句に朝からの異常気象に、体も頭もぼーっとする日々が続きすぎた。

テレビからは、
「熱中症には注意しよう。家の中にいても熱中症になることがある。冷房をつけて、こまめに水分補給を」
と、今年の異常な気温に注意勧告。そして、日本の多くの場所で、かつてない大雨による災害。今までに記録がない台風の進路での高波、強風の被害。猛暑、豪雨。
日本が壊れはじめているのかと、心配になる。

自然の猛威には、人間は微力だ。
その微力であるはずの人間の一部の人たちが、教育会やスポーツ会を壊しはじめている。
連日、報道される、権力を持った大人たちによるスキャンダル、不正疑惑。
組織や人の上に立ち、下の者を指導する立場の人間が、自分の私利私欲のために権力を使う。

権力ってなんだろう。
他人を支配し、服従させる力だと、辞書には書いてあった。
他の者に支配、服従を強いるのなら、教育関係者やスポーツ関係者に権力を与え、権力者に仕立てあげてしまってはいけない。
国の長、会社の長、組織の長になりたいと、自分の能力を磨いたり、熱い信念を持って人一倍の努力を続けて仕事に頑張る人はたくさんいる。
そして、長になったとき、人はその人を、出世頭や出世街道を驀進した、出来る人間と評価するだろう。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」は昔から言われていることわざだ。
故松下幸之助さんは経営哲学の中で、人の上に立てば立つほど謙虚さが必要で、熱意、人徳、優しさなど、すべてが謙虚な姿勢から滲み出ているものではないかとおっしゃったそうだ。
だが昨今は、上に立つ人間は、謙虚さどころか、自力で這い上がってきたんだという自負のもと、権力にしがみつく。
周りの人間も、長い物には巻かれるごとく忖度をし、自分の考えなど言わなくてなっていく。

そうなったら、権力を持った人間のやりたい放題になってしまうのも仕方がない。
だって、裸の王様なんだから。裸の王様に苦言を呈する人が出てくれば、王様自ら首を切ることができるのだから、そんな現場を見てしまった人たちは、正義感や反骨精神を捨て、自分の生活を守ることに必死になるだろう。

あああーーー嘆かわしい。
そんなことが、スポーツ界や教育界で次から次に起こっている。
いや、昔からあったのだろうが、今の時代はもう通用しないんだよ。
パワハラ、セクハラ、コンプライアンス、ガバナンス、今、マスコミで槍玉に上がっているおじいちゃんたちには、この意味さえわかっていないだろう。
まあ、どれも横文字っていうのも問題だが。

昔はまかり通っていたことや、セクハラやパワハラは、今は通らない。
スマホのおかげか、どんな密談も録音できてしまうし、撮影動画も残せるから証拠になってしまう。
そしてそれは、すぐにマスコミに届いて公に流れてしまう。
悪代官にワイロを渡していた悪者顔の越後屋だって、今の時代はすぐに寝返る。
昔はセクハラに口を閉じていた女性たちも、立ち上がり、訴える。
だからこそ、権力を持てる立場になった人間は謙虚になり、周りの人間を大事にし、信頼できる指導者として 後任の人々のよき見本になければならないのに 。

お金もほしい、名声や多くの人に尊敬もして欲しい、名誉も欲しい、できれば勲章も欲しいと思っている、権力を持った人間はいっぱいいる。
でも、そこには、その人自身の人間性が大切だ。
人の意見に耳を貸すこともできず、すべての利益を自分だけに集中させたい、私利私欲に走る人間を誰が尊敬できるだろうか。
おこぼれをもらいたい取り巻きや、おべっかしか言えない無能な部下に囲まれて、
「俺はトップに立っている」
と叫んだところで、誰が羨ましいと思うだろうか。
その挙句、マスコミから追いかけ回されると、かつて政治家の常套手段だった病院隠れをして、世間が鎮まるのを待つ。
本当に正しいことをしてきたのなら、堂々と自分の見解を公表し、名誉を傷つけられたと思うなら、名誉棄損で訴えればいい。
疑わしきは罰せずなのだから、後ろめたいことがないのなら、どんな状況でも、自分の正しさをアピールすればいいのに。

確かにマスコミの騒ぎすぎという部分も否めないが、司法に委ねられる部分は司法の判断を待つということで、静かに待っていたら、パワハラ、セクハラの件などは、結局うやむやになることも多いように感じる。
だって、本来なら教育機関の指導や助成金の配分を決める省庁の役人が、悪い越後屋さんの紹介で、医大に助成金を割り当てるのを餌にして、自分の息子を裏口入学させてもらったとか、もらわなかったとか?
その交渉のテープがマスコミで流されると、裏口入学させた理事が、それをあっさり認めたとか、理事をやめたとか?
国の長に近い指導する立場の人たちまでが、こんなことを平気でするのだから、何を信用していけばいいのだろうか?

結局、裏口入学させられたかもしれない息子だって、ある意味被害者だ。
才能、能力が満たしていない青年を医者につくりあげたって、ろくなことはない。
医療ミスをする医者になられた日には、患者もいい迷惑だ。
今回の彼方此方で繰り広げられるスキャンダルや不正疑惑、パワハラ問題。最大の犠牲者は、学生であったり、スポーツ選手だったり。
若者の芽を摘むおっさんたち (一部 おばさんも関わっている)もういい加減に、権力の座から降りて、穏やかな老後をお過ごしになってはいかがだろうか?